反射高速電子回折(RHEED)ロッキングカーブ強度計算プログラム

1.プログラムの概要

動力学的回折理論による強度計算プログラムの例を紹介します。

ここで紹介するプログラムは、マルチスライス法[1]を基本に1999年修士卒業の中村健司君が開発したFORTRANのプログラムです[2]。

表面は、Si(111)7x7構造の室温に対する10keVの電子線の回折強度の計算プログラムです。

下図のように、考慮した波の数により3つの場合のプログラムの実行ファイルを公開します。

入射方位は設定ができるようになっています。

基準を[112]方位に取り、0°として[110]方位へ向かって方位角が設定できます。

但し、このプログラムを実行するためには、富士通FORTRANのSSL2ライブラリーが必要です。

実際にSi(111)7x7構造以外の表面や温度を変化させて計算をされたい場合は、ご一報下さい。ソースファイルをお送りします。

[1] A. Ichimiya,  Jpn. J. Appl. Phys. 22, 176 (1983); 24, 1365 (1985).

[2] 中村健司、「反射高速電子線回折(RHEED)による表面構造変化の解析」(1999) 横浜市立大学 大学院総合理学研究科 修士論文。

[3] 重田諭吉, 表面科学 第24巻、128-135 (2003)

 

計算結果は、以下のようになります。

 

 

2.プログラムファイルのダウンロード

このプログラムを実行するためには、富士通FORTRANのSSL2ライブラリーが必要です。

以下の5つのファイルがダウンロードできます。

d)とe)は座標データですので、a)〜c)の全てのプログラムを実行するときに必要です。

 

a)1波近似による計算実行ファイル。[1 beam RT.exe]

b) 3波近似による計算実行ファイル。[3 beam RT.exe]

c) 15波近似による計算実行ファイル。[15 beam RT.exe]

d) Siのバルク結晶の原子位置座標データ。[pab2.dat]

e) Si(111)7x7構造の原子位置座標データ。[pas1_1.dat]

 

3.実行ファイルの内容

a)、b)、c)のファイルを実行すると、

視射角の計算範囲と刻みを表す表示に続き、方位角を聞いてきます。

[112] を基準として、[110]方位へ向かった回転角を入力して下さい。

その後、計算結果を出力するファイル名

RHEED Intensity                     : Int0.txt

RHEED Intensity (Inc. Exp. Func.): Int1.txt

が表示されます。

”Int1.txt”が測定結果と比較すべき強度で、電子線の平行性やビーム径を考慮した装置関数がくりこまれています。

その後、計算に取り入れられた逆格子の座標が[112]方向成分,[110]方向成分の順に[Å-1]の単位で表示され、最後にビーム数, n, が ”n-beam calculation” と言うように表示されます。

そして、指定した座標に電子線に対する1原子ポテンシャルが入れられ結晶ポテンシャルを計算する段階に入ります。

1原子ポテンシャルの実数部は、Doyle and Turner[4]により計算された弾性散乱ポテンシャルを用い、虚数部は、Dudarevらにより提案された温度散漫散乱を考慮した非弾性散乱ポテンシャルと電子励起による項を考慮してある。温度散漫散乱を考慮する場合、原子の熱振動による振幅、u、を仮定する必要,があり、計算ではデバイパラメータB=8π<u>=0.355 [Å]と仮定している。ここで、<u>は原子の熱振動の二乗平均を表します。

この実行ファイルで用いたデバイパラメータB=0.355の値は、室温のSi原子の振動に対応する値です[6]。

結晶ポテンシャルが計算されると強度計算に入ります。最終的に計算が終了すると、結果を”Int1.txt” に出力し、合計の計算時間を表示し、終了します。

 出力ファイルには、視射角、00ロッド、1,1ロッド、1,1ロッドの強度の順にデータが納められています。

[4] P.A.Doyle and P.S.Turner, Acta Crystallogr. A24, 390 (1968).

[5] S.L. Dudarev, L.-M. Peng, and M.J. Whelan, Surf. Sci. 330, 86 (1995) .

[6]   Y. Fukaya, K. Nakamura, and Y. Shigeta, J. Vac. Sci. Technol. A18, 968 (2000) .

 

4.データファイルの内容

4.1. [pab2.dat]:Siのバルク結晶の原子位置座標データ

格子定数、ao=5.43Å、のダイヤモンド構造の座標位置が 格納されています。

[111]方向をz方向に取っており、座標系の単位は、Qian & Chadi [7]の定義に従っています。

大きさは、(111)面内に7x7構造の1ユニット(625.7Å)、深さ方向に 二重層3層分に相当する領域に含まれる294原子の座標が入っています。(7x7x2x3=294)

バルクのデータはユニットセルを考慮すれば十分なのですが、このように大きく取ると表面の7x7構造のポテンシャルと何の問題もなく接続することが出来ます。

この計算プログラムの特徴でもありますが、他の計算法では表面領域とバルク領域を分けて計算し境界条件でつなぐ方法が多いのですが、このプログラムでは表面領域とバルク領域を分けずに強度計算しています。

 

[7]  G.X.Qian and D.J.Chadi, Phys. Rev. B 35, 1288 (1987).

Qian & Chadi の定義した座標系

(111)面内に、X,Y軸を取り,Z軸を[111]方向に取る。

X軸を[110]方向に取り、単位を[110]方向の原子間隔、ax=ao/Ö23.84Åとする。

Y軸を[112]方向に取り、単位をay=a/Ö32.22Åとする。

Z軸の単位、az、は、(111)面の二重層の層間隔 az=ao/4Ö30.784Åとする。

 

 

4.2. [pas1_1.dat]:Si(111)7x7表面構造の原子位置座標データ

Brommerら[8]が第一原理計算で最適化した原子位置のデータが格納されています。

座標系はQian & Chadi の定義した座標系を使って書かれています。

大きさは、(111)面内に7x7構造の1ユニット(625.7Å)、深さ方向 は、adoatomと7x7構造を形成する表面二重層そしてそのしたの一層を合わせた151原子の座標について値が示されています。

多少変化させて、強度がどの様に変化するか見ることが出来ます。

 

[8] K.D. Brommer, M. Needels, B.E. Larson and J.D. Josnnopoulos, Phys. Rev. Lett. 68, 1355 (1992).

 

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